30 「大学」で「法を学ぶ」ということは、何を意味するのでしょうか。伝統的には、法を運用することができる専門家を目指す、という目的があるように思います。社会は常に、法曹、司法書士、公務員、企業の法務担当者など、法を運用できる法律専門家の存在を必要としています。しかし、それだけではありません。私たちは、法に依拠して社会生活を営んでいます。出生、入学、就職、結婚、居住、旅行、交通…。どの場面でも法と切り離すことはできません。ですから、私たちが生きるうえで、法的な知識や考え方が必要不可欠になるのです。より普遍的な法的思考を学ぶことを通じて、今までの物の見方と異なる視野を手に入れること。これも、法学を学ぶことの大きな意義といえます。さらに今、日本の社会は、曲がり角に差し掛かっています。拡大から維持・縮減へ転換し、さまざまな格差が拡大化し、難しい外交問題が横たわり、災害への体制整備が急務となっています。今までの法では対応できない問題がたくさん露呈しています。そのような中で、現在ある法だけではなく、未来志向的に「これからあるべき法」を模索し、社会に提言できるようになることも、法学と向き合う者の役割です。埼玉県出身。1994年本学法学部卒業。1996年本学大学院法学研究科博士前期課程修了。岩手大学人文社会科学部助教授、獨協大学法学部助教授などを経て、2009年より本学法学部教授。2017年11月より通信教育部長に就任。専攻は民事法学。 本学の通信教育課程では、現在、約4,000人の学生が在籍していますが、その多くが、働きながら学んでいます。高齢の方も少なくありません。みなさんが、それぞれの人生のバックボーンを持ちながら、日々、学習に励んでいます。そのような多様な学生層に、法学という学問は親和的です。なぜなら、法は社会の中に生きているからです。社会を知らなければ、苦い人生経験を積まなければ、何か理不尽なことに直面しなければ、なかなか法に関心が持てないはずです。そのような意味において、社会人になってからこそが、法学と向き合うチャンスということもできます。本学の通信教育課程は、入学しやすく、卒業しにくい課程です。同時に、それぞれの学生が、多様な目的や問題意識を持ち、また、等しく熱意を持って学んでいる場でもあります。そのような意味で、最も「本来の大学」らしい学びの場であるかもしれません。たくさんの方に、伝統ある「法科の中央」で、法を学んでいただきたいと心から願っています。Message多様な目的や問題意識を持ったたくさんの方に法を学んでいただきたい。通信教育部長 法学部教授 遠藤 研一郎
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